低迷続く大阪府・大阪市の「幸福度ランキング」①

トピック

メディアからも注目が集まる、寺島実郎氏監修による日本総合研究所の『都道府県幸福度ランキング』。2年に1度出版されていますが、その2018年版が先日、発行されました。

都道府県幸福度ランキング

『全47都道府県幸福度ランキング2018年版』

寺島実郎(監修)
(一財)日本総合研究所(編)
日本ユニシス株式会社総合技術研究所(編)
発行:東洋経済新報社


残念ながら大阪府は出版が始まった2012年版以来、42位、43位、44位と低迷が続いています。奇しくも、この期間は松井一郎府知事の在任期間とほぼ重なります。

また一方、2016年版から始まった政令指定都市ランキングでは、20政令指定都市中なんと最下位の20位でした。こちらは吉村洋文市長の在任期間と重なりますね。

では、2018年版はどうだったでしょうか? 日頃から維新の政治による「改革」の成果を豪語していた松井知事と吉村市長。さぞかし成果がランクアップにつながったのだろうと見てみると…。

大阪府43位。大阪市は引き続き最下位の20位。

うーむ。お2人の「実績」は必ずしもランクアップにはつながらなかったようです。

もちろんランキングの基準に対する異論もあるでしょうし、必ずしも行政のトップに責任を帰せられない指標もあるでしょう。本書も「ランキングだけを見る人は浅い」と注意を喚起しておられます。

要するに、ランキングはより良い大阪府、大阪市の実現に何が必要かを考える素材としたとき、最も有効性を発揮するということでしょう。

ここではそういう視点から、このランキングのいくつかのポイントを紹介しようと思います。「維新政治」の批判に見えるかもしれませんが、あくまでより良い大阪のための考察です。

短い健康寿命、貧弱な健康施設、ホームヘルパーの数は日本一

このランキングは「健康」「文化」「仕事」「生活」「教育」の5分野で評価されていますが、大阪府も大阪市も「文化」以外はすべて低迷しています。順に見ていきましょう。

先ずは「健康」分野。総合で府は37位ですが、気になるのは「健康寿命」が71.5歳で47位と最下位なこと。健康寿命とは「健康上の問題で日常生活に制限のない期間」を指します。

市は平均寿命が81.3歳で最下位の20位です。

低迷続く大阪府・大阪市の「幸福度ランキング」立憲民主党大阪府連「都構想」ポータル

この健康分野の指標でもう1つ最下位なのが、「体育・スポーツ施設数」。「(社会体育施設+民間体育施設)÷総人口」で算出されます。

これがなんと人口10万人当たり府18.6で1位・長野県の125.7の15%弱、市9.1で1位・静岡市46.1の5分の1弱。

「二重行政のムダ」のひとつに挙げられた府立体育館と市立中央体育館のどちらかを潰すという話はさすがになくなったようですが、各行政区に整備されてきたスポーツセンターやプールは今も見直しの危機にあります。

低迷続く大阪府・大阪市の「幸福度ランキング」立憲民主党大阪府連「都構想」ポータル

これとの比較で面白いのは「ホームヘルパー数」です。65歳以上人口1,000人あたりのヘルパー数で見ると、大阪府は12.5人で、大阪市は18.6人。ともに全国1位です。

これは介護や福祉の基盤整備に力を入れていることでもあり、決して批判されるものではありません。しかし、今年の介護保険料の改定で、大阪市の保険料は全国一高額に。

「他都市と比較して高いことは認識している。介護予防などに取り組み、引き続き国に公費負担割合の引き上げを求めていく」との大阪市介護保険課の担当の談話を、朝日新聞は報じています。

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大阪府も大阪市も一人暮らし高齢者率がそれぞれ都道府県、政令市でトップであり、構造的に介護給付へのニーズが高くなりやすいとはいえ、これ以上の保険料の値上げには府民、市民は耐えられないのも事実。

全国的にも焦眉の課題と言える介護予防の充実の観点からも、画一的な「二重行政のムダ」論に立った健康施設の見直しは考え直すときではないでしょうか。

進む本社機能の流出、「働く者」の環境は悪化、踏ん張る中小企業

「仕事」分野も大阪府は46位(ワースト2)と低迷しています。特に低位の指標は「本社機能流出・流入数」が46位。96社の本社機能が流出しています。

また、「正規雇用者比率」が45位、「大卒者進路未定者率」が43位、「障碍者雇用率」が43位、「若者完全失業率」が41位など、若者を中心として「働く者」の環境が悪化していることが示唆されています。

一方で「特許等出願件数」が2位、「事業所新設率」が5位など高い評価を得ている項目もあります。これらは大阪が誇る中小企業の技術力の面目躍如といったところでしょうか。

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大阪市は「仕事」分野は5位と上位に位置し、特に「小売販売額」は全国1位。さすが「商都・大阪」です。

しかし、「若者完全失業率」と「正規雇用者比率」はともに17位、「高卒者進路未定者率」は16位と芳しくありません。

その意味では、「高齢者有業率」2位、「女性の労働力人口比率」3位という高位指標は、女性や高齢者の社会参加が進んでいる積極面とともに、経済的に苦しい層が多いという実態をあらわしている側面も見逃せません。

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総じて大阪の「仕事」をめぐる状況は、有効な地域経済政策を打ち出せない中で、本社機能の流出が進み、そのしわ寄せが「働く者」に行ってしまっているというのが実態と言えます。

中小企業や商店街など大阪経済を支えてきたアクターは、今も必死で頑張っているけれども、むしろ限界に近づいているのが実態ではないでしょうか。

大阪市は2014年、「二重行政のムダ」の解消と称して「大阪市信用保証協会」を廃止し、「大阪府信用保証協会」に統合してしまいました。そのことが中小企業支援を後退させています。

地域経済の担い手であった商店街振興組合は「既得権益」と批判にさらされ、商店街振興予算は近年、急速に減らされています。この政策は本当に正しかったのか? 今こそ問い直されなければならないでしょう。