特別区設置のデメリット「大損する大阪市民」②

特別区設置のデメリット

大きすぎる規模、小さすぎる権限

①大きすぎる「特別区」

法定協議会は維新の会と公明党の賛成で特別区の区割りを「4区B案」に絞り込みました。「6区案」では移行コストがかかりすぎるからというのが理由です。

「4区B案」の場合、最高で70万人を超える特別区ができ、最低でも55万人規模の特別区となります。

ちなみに大阪府域の大阪市を除く市の人口は、堺市844,030人(政令市)、東大阪市493,922人(中核市)、枚方市404,963人(中核市)、豊中市403,991人(中核市)です(2017年、住基調べ)。

立憲民主党大阪府連「都構想」ポータル

参照:図5・「大都市制度(特別区設置)協議会だより」(2018年1月発行)より

②仕事は「中核市」並み、財源・権限は町村以下

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参照:図6・「大都市制度(特別区設置)協議会だより」(2018年1月発行)より
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政令市のみならず一般市にもある用途地域の指定など都市計画にかかわる権限がすべて府に奪われます。この都市計画権限は住民の生活環境の保全とともに、経済政策と連動し、税収確保にも大きな影響を及ぼします。

一方で、福祉や保健、義務教育など市民生活に密着した事業はすべて特別区の仕事とされています。身近な自治体でこれらの事業が担われる方がいいと維新の会は言います。

しかし、それは十分な財源があってのことです。特別区の自主財源約1,600億円では全く足りません。

「財政調整交付金」等が3,600億円ありますが、もともとの1,300億円「天引き(ピンハネ?)」された額で現行のサービス水準を維持できる保証はありません。

国からの交付金の府市の取り分も根拠薄弱で、特に「臨時財政対策債」と言う「借金」が特別区にのみ割り振られていることも心配です。

本格的な人口減少時代を迎え、成熟型都市経営が求められていますが、その要諦は「コンパクトシティ」に代表されるような公共交通の整備や自然資本への投資などにより都市の付加価値を高め、固定資産税や都市計画税の税収増を図りつつ、地域コミュニティを再生し、市民福祉を増進することにあると言われています。

そのためには基礎自治体の果たす役割がますます重要となります。まちづくり権限が著しく奪われる特別区では、都市の付加価値を高めて税収増につなげるような投資そのものができなくなります。

③市民の声は届かない

「ニア・イズ・ベター」は地方分権推進のキャッチフレーズとしてよく使われます。地方自治の原則である「補完性の原理」を分かりやすく表現した言葉です。

つまり地域でできることは地域で、地域では解決できないことは基礎自治体(市町村)で、基礎自治体で解決できないことは広域自治体(都道府県)で、広域自治体でも解決できないことは国で、という考え方です。

しかし、維新の会はこの言葉の趣旨を捻じ曲げて使います。都構想は現行制度上、最も権限が大きい基礎自治体である政令市・大阪市を廃止して、大阪府に権限を集中する構想で、「府県集権主義」と言われ地方自治の本旨に反しています。

その本質をごまかすために、特別区なら区長も区議会議員も選べるなどと言います。しかし、大阪市がなくなるため大阪市長も大阪市議会議員もなくなり、選べなくなることには触れません。しかも、これまで説明したように選んだ区長や区議会にはわずかな権限しかありません。

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参照:大阪の自治を考える研究会編著「いま、なぜ大阪市の消滅なのか」より
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