
やはり、二重行政はなかった①住吉市民病院廃止がもたらすもの
なくてはならない地域病院が廃止
2018年3月末、ひとつの公立病院が廃止されました。その名は「大阪市立住吉市民病院」。
101床の小児科と産婦人科だけの病院ですが、10代のシングルマザーや未受診妊婦の出産など福祉的ニーズの高いケースを積極的に受け入れ、家族付添いなし入院や重症心身障害児の短期入所の機能を併せ持つなど、まさに「地域になくてはならない」病院でした。
廃止を決めたのは維新市政。約2キロ東に「大阪府立急性期・総合医療センター」があることから「二重行政の無駄」の典型とやり玉に挙げ、同センター内に新たに母子医療センターを建設することで廃止を決めました。
しかし、東西の交通の便が悪い南部地域で2キロはかなりの距離。それ以上に、新設される母子センターに住吉市民病院のような福祉的機能は望めません。
当然、多くの市民がこの廃止案に反対の声を上げました。そのため大阪市会は13年3月、府市2病院の統合にあたって「跡地に民間病院を誘致する」との付帯決議を付けて、16年3月末での閉鎖を承認しました。

旧市立住吉市民病院。18年4月より市立住之江診療所が開設。
※立憲民主党大阪府連撮影
「医療空白」が現実に
しかし、吉村洋文市長は14年7月、同年12月、2017年5月と3度にわたって民間病院の誘致に失敗。
やむを得ず閉院時期を18年3月末に延期したうえで、17年11月、代わりに市立大学医学部付属病院を跡地に誘致する方針を示しましたが、大学側との協議はまだ始まったばかりです。
2018年4月以降は暫定的に「 市立住之江診療所 」が開設されていますが、「外来」のみで入院や短期入所のニーズには対応できません。
例えば旧住吉市民病院の重症心身障害児の短期入所には46人が登録しており、17年度は延べ510日利用されていました。
しかし廃院後は、新センターに1床、都島区の市立総合医療センターに1床で受け付けられるのみとなり、不安の声が上がっています。
「医療空白」は現実のものとなってしまいました。
コスト膨らみ84億円、さらなる税金投入も
そもそも市立大学病院を誘致するなら、最初から住吉市民病院を存続させていればよかった話。しかも、大阪府が30億円としていた機能統合に必要な費用が、実際は当初から60億円もかかると、17年3月に発覚。
17年9月の時点で84億円にまで膨らんでおり、大阪市の負担は当初予定から大きくならざるを得ない状況です。
しかも、いつになるか不透明な市立大学病院の開設にも税金の投入は不可避です。
ありもしない「二重行政の解消」、ツケは市民に
3月10日に住之江区で開催された説明会で、吉村市長は「晩婚化が進み、ハイリスク出産に対応できる病院が必要だ」と再編に理解を求めたと報じられましたが( 2018年3月12日付朝日新聞 )、「二重行政の無駄の解消」はどこに消えたのでしょうか。
相変わらず言を左右にして誤りを認めない維新政治ですが、そのツケはいつも市民に回されていることを見逃すわけにはいきません。