
低迷続く大阪府・大阪市の「幸福度ランキング」②
メディアからも注目が集まる寺島実郎氏監修による日本総合研究所の「都道府県幸福度ランキング」。2年に1度出版されていますが、その2018年版が先日、発行されました。
「低迷続く大阪府・大阪市の『幸福度ランキング』①」 に続いて、ランキングを元に大阪の今の課題を探ります。
生活と教育-厳しい貧困が「くらし」と「育ち」に影を落としている
「生活」分野は大阪府が40位、大阪市が最下位の20位です。目を引くのがともにワースト1の「生活保護受給率」です。
都道府県では46位の北海道が5.1%、47位の大阪府が5.7%、政令市では19位の札幌市が5.8%なのに対して、政令市20位の大阪市は8.7%と突出しています。
大阪市は「刑法犯認知件数」で20位の人口千人当たり21.5件(19位の堺市は14.3件)、「一人暮らし高齢者率」で20位の30.1%(19位の福岡市は25.6%))などでも突出した数値を示しています。これらは背景に深刻な貧困問題が存在することを示唆しています。
この事実は「教育」の分野にどんな影響を及ぼしているでしょうか? 総合評価では大阪府が43位、大阪市が19位です。「学力」は大阪が44位と厳しい実態です(なお、政令市のランキング評価指標に「学力」は入っていません)。
「不登校児童生徒率」は大阪府が41位で1.54%、大阪市が20位で1.92%と、不登校問題も深刻です。大阪市の「義務教育費(自治体が公立小・中学校の児童・生徒1人あたりに支出している金額)」は273,577円で政令市1位です。
それを見る限り教育に力を入れていると思われますが、問題はそれが課題の克服に有効につながっているかどうかです。
この間、大阪の教育は校区の廃止による高校間の競争強化、連年にわたって定員割れした高校の廃止、内申書の配点を学力テストの成績に基づいて中学校ごとに差をつける制度の導入、「塾代補助」など受験競争をあおるような政策が進められてきました。
また、現場の教師がこうした方針に逆らえないように管理を強めてきました。たとえ義務教育費をたくさん投入しても、その結果が学力の低迷と不登校など学校問題の深刻化であるとしたら、やっぱり再考が求められているとしか言いようがありません。
「社会教育」の分野で「社会教育費」が大阪府は44位、大阪市は19位と低いのも気になります。「二重行政のムダ」の解消の名の下に、さまざまな文化施設等の見直しがさらに進むと、ますます殺伐とした都市になってしまいそうです。
指標のひとつに「悩みやストレスのある者の率」というものがあります。「国民生活基礎調査」(厚生労働省)における12歳以上の男女のうち、日常生活で悩みやストレスのある者と答えた者の割合です。
これが大阪府は50.3%で44位、大阪市は54.1%で20位となっています。大阪府民・大阪市民は全国有数の「悩める」人であることを強いられているのです。大阪の社会教育はこれに対応できていません。
「ランキング」を生かすと「維新政治」の対案が見えてくる
大阪府3位、大阪市2位と比較的評価の高かった「文化」の分野も、高評価なのは「外国人宿泊者数」など最近のインバウンド・ブームの影響とみられるものや、「外国人住民数」など歴史的経緯によるものなど、必ずしも行政水準や文化水準の高さを表していないと思われる指標も見受けられました。
「書籍購入額」が府市ともに1位ですが、これもあまり行政とは関係ないでしょう。「姉妹都市提携数」は大阪府が71都市で3位、大阪市が8都市で2位(もっとも5都市が同数で2位)と高評価ですが、吉村洋文市長のサンフランシスコ市との姉妹都市解消の動きなど、せっかくの評価を損なうような動きも出てきています。
ほんの少しの指標についてしか触れられませんでした。反論もあろうかと思います。すべてを「維新政治」の責任にすることも不適切でしょう。
しかし「ランキング」から見えてくる大阪府、大阪市の都市経営上の問題解決に、今の「維新政治」が適切な回答となっているか否かは厳しく問われなければならないでしょう。
最後に政令市ランキングの「生活」分野の指標で「都市公園面積」というのがあります。大阪市は市民1人当たり3.6㎡で最下位の20位です。
元々、緑の少なかった大阪市。緑を増やそうと、焼け野原のままだった大阪城公園に植樹する活動を始めたのは中馬馨第13代大阪市長でした。
その大阪城公園の管理が営利団体に委託され、せっかくの樹が切られ商業施設が建てられています。なんてさびしい話でしょう。
やはりこういう都市経営のあり方は間違いだと思います。「ランキング」に一喜一憂するのではなく、そこからあるべき都市像を考えることは、それはとりもなおさず「維新政治」への対案を示すことになる。私たちはそう考えます。